星野有史 “研究所通信/ハーネスランド”

マリアのイラスト
 「ハーネス・ウィ研究所通信」のタイトル『ハーネスランド』は、天使犬ウィが暮らしていた故郷、理想の福祉社会をイメージした「共星=ハーネスランド」から名前をつけました。この星に住む天使達が協力し合って生活しているモデルを理想に、私達も心のハーネスを輝かせ、ともに助け合い成長できるコミュニティを願って発信するものです。
<< 話しかけてもいいんだよ | main | 立ち上がってもらえますか! >>
梅雨のせいではないけれど!
0
    梅雨のせいではないけれど!


    今年の関東地方は梅雨らしい梅雨!
    蒸し暑いし、そこそこ雨も。
    そんなふうに感じるのは、私だけ?

    外は今にも雨が落ちてきそうな空気。
    じめじめして鬱陶しい。
    何だか気分がのらないが、そうも言ってられない。
    専門学校で講義がある。
    私は気合を入れて、家を出た。

    学校近くの駅に着く。
    傘を開く音、水をはじく自動車。
    やっぱり雨が降りだしてしまった。
    立ち止まり考える。
    ここから学校までは15分くらい歩かなければならない。
    レインコートを着せても……
    シャンプーしたてのシータスを濡らしたくはなかった。
    東京のタクシー料金は安い。ワンメーターで行くだろう。
    私はタクシーを選んだ。
    ドアが開く。

    「お客さん、ちょっと待って。犬がいるの?」
    「盲導犬ですが」
    「それなら仕方ないか。おしっこはしないだろうな」
    「ちゃんと仕付けてあるから大丈夫」
    そう言って私はタクシーに乗り込んだ。
    シータスは狭い足元で身を縮ませた。

    「でもな、やっぱり……動物の臭いが残ると困るんだよ」
    〈あんたの加齢臭の方がよほど臭うよ〉と思ったが、
    失礼なので口にせず。

    ぶつぶつ不満を吐露していたが、
    ドアを閉めたので乗車を認めたってことなんだろう。
    私は行先を告げた。

    「あのさ、あんたみたいに身体の悪い人が時々乗るんだけど」
    〈…………?〉
    「俺はお世話しないよっていつも話してんの」
    〈…………?〉
    「だって、手助けしてやる介護の資格、持ってないしな」
    〈だったら取ればいいでしょ。それに資格がなくてもできることはあるのに〉
    そう思ったが、心に留める。
    「だから、あんたも降りたら一人で行ってくれよ。手伝わないから」
    〈誰もお願いなんかしてないし……〉
    それも、言葉にせず。
    「困るんだよ。俺は介護人じゃなくて運転手なんだからさ」
    結構しつこい。蒸し暑い梅雨のせいでいらいらしてんのかな?
    しばし、無言。
    そのうち
    「もう少しで着くよ」と運転手。

    車が止まる。
    料金を支払ってシータスを後ろ足から降ろす。
    「あそこに人がいるから声かけてやろうか」
    「いいえ」
    「ふーん」
    〈それなら資格を取ってから。この学校でも教えてくれますよ〉
    そう言ってやりたかったが……絡まれそうなので、止めた。

    来年は東京でパラリンピックがある。
    外国から障害のある人たちも大勢来るだろう。
    盲導犬も。
    こんなんで大丈夫なのかな?

    身体の不自由な人の乗車に、
    サービスの行き届いたタクシー会社はたくさんある。
    ヘルパーの資格を持つドライバーも(#^.^#)
    移動が困難な人にとっては、とーっても助かる。
    けれど、
    時々いるんだ、こうして嫌味を言う運転手が('_')
    乗車拒否をする車もあるから、いい方なのかな?
    何でまだこんなレベルなんだー!

    急ぎ足で学校に入った。
    「先生、シータスちゃーん」と明るく学生に迎えられて……
    一気に心の雲が晴れた。
    それなのに、もふもふした癒し雲が胸中を覆い、
    まぶたを腫らして何かがこぼれ落ちそうになるのは……
    きっと梅雨の湿気が原因。
    そういうことにしておこう。


    <星野有史>



    | 星野有史 | - | 12:30 | - | - | - | - |
      12345
    6789101112
    13141516171819
    20212223242526
    2728293031  
    << October 2019 >>

    bolg index このページの先頭へ